愛媛県の東予地方を流れる「国領川」は、標高1,855mの「ちち山」を源として、新居浜市のほぼ中央を南北に流れて燧灘(ひうちなだ)に注ぐ全長約7.4qの二級河川です。
かつて日本が世界に誇った三大銅山の一つ、別子銅山(近代産業遺産)と縁が深く、上流から下流まで、銅山に関係した施設が点在しています。目を奪う渓谷美の別子ラインと共に、近代の歴史を体験できる見どころをピックアップしました。
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マイントピア別子付近 |
清滝よりさらに上流 |
明治初期、住友初代総領事として明治政府による接収から別子銅山を守った広瀬宰平の屋敷を開放したもの。屋敷と庭園、隣接地に建てられた展示館を見て回れます。
邸宅は和式建築ながら板ガラス、洋式トイレ、マントルピースや避雷針等、西洋の建築技術がいたるところに採用されています。一歩外に出れば、手入れの行き届いた庭園。案内標識がなければ迷うほど広い庭を通り抜ければ、展示館の前に出ます。
展示館では広瀬宰平の足跡や近代化への歩みが当時の資料や映像で紹介されています。旧広瀬邸は、当時の時代背景を物語る貴重な近代建築として、国の重要文化財に指定されています。
開館時間:9:30〜17:30
休館日:月曜日
TEL:0897-40-6333
展示館 |
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旧広瀬邸 |
屋敷の中は今も明治時代のまま |
室町時代の1448(文安5)年に建立された曹洞宗の寺で、西日本有数の禅道場として知られています。老松、檜におおわれた参道は木漏れ日が差し込み、その美しさにゆっくりとした歩みになります。山門をくぐると、目の前に現れるチリ一つない境内。静謐な雰囲気に思わず背筋がピンと伸びます。本堂近くの大イチョウは天然記念物に指定されています。
瑞応寺の境内 |
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木漏れ日が出迎える山門 |
江戸時代の元禄年間から数えることおよそ280年、日本の産業を支え、昭和50年に幕を閉じた別子銅山の歴史を後世に伝えるため、住友グループ各社が共同で設立した記念館。驚くのは、その外観。山の斜面を利用した半地下構造になっており、屋根には1万本を超えるサツキが植えられ、周囲の景観に見事に溶けこんでいます。
館内は別子銅山開坑以来の歴史、風俗、技術など豊富な資料が展示されており、単なる記念館の域を超えた立派な博物館として整備されています。
館外には、日本初の山岳鉄道である鉱山列車「別子1号」の蒸気機関車が展示されていいます。中に展示された資料を読んでから機関車を見ると、当時の様子がリアルに胸に迫ってきます。記念館は入場無料です。
開館時間:9:00〜16:00
休館日:月曜日・祝日
TEL:0897-41-2200
記念館は半地下構造。サツキが植屋根 |
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鉱山列車「別子1号」 |
国領川に架かる生子(しょうじ)橋からマイントピア別子、鹿森ダム,遠登志渓谷、清滝を経て川又に至る約10qの渓谷美は、別子ラインと呼ばれる日本有数の景勝地です。生子橋を境に上流と下流では、川の表情が違うのが見て取れます。
別子ラインの名前の由来は、ドイツのライン川の美しさにあやかって付けられたもので、清流に点在する巨岩と山々を覆い尽くす広葉樹の織りなす渓谷美が四季を通じて楽しめます。中でも秋の紅葉は見事で、「新日本百景」に選ばれています。
(端出場ゾーンまで)
緑に囲まれた生子橋 |
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橋を渡った先は内宮神社(うちのみやじんじゃ)の石段 |
別子銅山の跡地を自然と数多くの産業・歴史遺産が織りなすテーマパークとして甦らせたマイントピア別子は、最後の採鉱本部が置かれていた端出場(はでば)地区を開発した端出場ゾーンと最盛期の拠点であった東平(とうなる)地区を開発した東平ゾーンから成っています。
市街地から車を走らせること10分ほどで、端出場ゾーンに到着です。端出場ゾーンは、四国「道の駅」の一つにもなっています。
温泉施設「ヘルシーランド別子」や飲食・イベント施設などを備えた「瑞出場記念館」、銅細工が体験できる「銅工房・あかがねの里」、銅山の様子を再現した「観光坑道」、「瑞出場記念館」と「観光坑道」を結んで運行する日本初の山岳鉄道を復元した「鉱山鉄道」など見どころいっぱい。砂金採り体験施設やイベント広場等もあり、たくさんの人で賑わっています。
また、「鉱山鉄道」で通過する鉄道開通時そのままの「中尾トンネル」や明治26年に架けられたドイツ製の鉄橋「ピントラス橋」、明治45年に完成した当時そのままの姿を残す「旧水力発電所跡」など、敷地内のあちこちに産業遺産が残されています。
営業時間: 春休み〜10月/9:00〜18:00、
11月/9:00〜17:00、
12月〜春休/10:00〜17:00
定休日:年中無休
(2月に定期点検の休館期間あり)
TEL:0897-43-1801
正面の入り口でチケットを購入 |
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瑞出場ゾーン一番の見どころは、鉱山鉄道に乗って移動する観光坑道。坑道の中に、江戸時代から近代にかけての別子銅山の採鉱の様子を展示しています。 地下1000mエレベーターやリフトなど、子どものための体験ゾーンもあります。 |
観光坑道 |
鉱山鉄道 |
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ピントラス橋 |
旧水力発電所跡 |
砂金採り体験 |
鹿森ダムのすぐ近く、県道から遊歩道に入り歩いて5分ほどで遠登志橋に着きます。
朱塗りのアーチ橋は明治38年に完成したもので、日本最古級の鉄橋です。ドイツ人の設計によることからドイツ橋とも呼ばれています。
吊り橋に見えるのになぜアーチ橋?実は吊り橋は平成になってアーチ橋の上に造られたもので、よ〜く見ると、吊り橋部分とその下のアーチ部分はつながっていません。国の登録有形文化財に指定されています。
遊歩道の手前にある鹿森ダム |
遠登志橋 |
車1台がやっと通れる暗くて細いいくつもの急カーブの山道を越えると、いきなり視界がパッと開けて、そこが目指した東平ゾーン。ここは、かつて別子銅山の採掘現場の中心地であった場所です。端から端まで歩いて15分以上かかる敷地のあちこちに、産業遺産が残されています。まずは拠点となる東平歴史資料館で鉱山の町として栄えた往時の集落の生活の様子を見てから、ゾーン内の散策を始めましょう。
保安本部が置かれていたレンガ造りの貴重な産業遺産は、銅版レリーフを自ら体験できる「マイン工房」として生まれ変わっています。明治35年完成の長さ1,795mの主要運搬坑道「第三通洞」や坑道掘削用のダイナマイト等を保管していた「旧東平火薬庫口」、その他、東平と端出場を結ぶ輸送機関であった「東平索道(ロープウェイ)停車場跡」、鉱石を一時的に貯蔵した重厚な花崗岩造りの「貯鉱庫跡」等、端出場ゾーンに負けず劣らず見どころいっぱい。中でも停車場跡から貯鉱庫跡の一帯は、ペルーにある世界遺産・マチュピチュの雰囲気に似ていることから、東洋のマチュピチュと言われています。
資料館開館時間:10:00〜17:00
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、
12月から翌年2月末まで休館
TEL:0897-36-1300
停車場跡と貯鉱庫跡。マチュピチュを思わせる雰囲気 |
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東平歴史資料館 |
インクライン跡 |
東平マイン工房 |
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東平索道停車場跡 |
資料館のすぐ近く、傾斜面にレールを敷き貨物を運んだインクラインの跡が220段の階段になっています。ここを降りると停車場跡と貯鉱庫跡。一方、資料館から徒歩15分ほど歩いた先の広場には、第三通洞や火薬庫跡、第三変電所跡などがあります。 |
第三通洞 |
旧東平火薬庫口 |
第三変電所跡 |