奈半利川は、高知県東部を流れる全長約61.1km、流域面積約311.34㎢、高知県内の二級河川では最大の河川です。四国山脈に連なる甚吉森(標高1,423m)に源を発し、馬路村で東川を、北川村で月谷川、小川川、西谷川、野川川、加茂川等を合流し、田野町で池谷川を合わせて士佐湾に注いでいます。今回は、太平洋沿岸の河口付近から、日本屈指の美林が広がる上流域の見どころを訪ねます。
奈半利川の河口に位置する町営「田野町完全天日塩製塩体験施設」は、太陽熱と風力の自然エネルギーで塩を作る体験施設です。川の水と海水が混じり合う汽水域の海水を汲み上げ、高さ10mのタワーで海水の塩分濃度を高め、ビニールハウスに移 して塩の結晶を作る製塩工程は、予約することで見学・体験が可能です。隣接する塩職人の店「田野屋塩二郎」は、味や結晶の大きさを自在に変える塩づくりで知られる名店です。
●田野町完全天日塩製塩体験施設
予約条件:体験、見学共に10日前までに要予約
休館日:火曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始
開館時間:9時~(最終入館16時)
問い合わせ:☎0887-38-2390
製塩体験施設付近の奈半利川河口 |
天日塩製塩施設 |
塩分濃度の濃い海水を 結晶化させる作業 |
粉雪のようにキラキラと美しく輝く天日塩 |
「岡御殿」のある田野町は、奈半利川と安田川に挟まれた地にあり、江戸時代には材木の集積地として大いに栄えました。「岡御殿」は、木材業や回船業で財を成し、田野随ーとうたわれた豪商・岡家が建てた屋敷です。藩主の参勤交代や東部巡視の際に、本陣として使われました。御殿・土蔵・御成門などが保存復元されており、藩政末期の豪商の暮らしを垣間見ること ができます。
●岡御殿(高知県指定文化財)
休館日:火曜日(祝日の場合は翌日)・12月28日~1月2日
開館時間:9時~16時30分
問い合わせ:☎0887-38-3385
![]() 岡御殿外観 |
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岡御殿内部 お殿様も座った座敷 |
「道の駅田野駅屋」は、鉄道「ごめん・なはり線」田野駅と一体となった道の駅です。売店には、朝どれの野菜や地元の素材を生かしたスイーツ、木製の加工品といった田野町ならではの特産品が並んでいます。地元の食材を生かした軽食コ ーナー もあり、メニューも充実しています。情報発信コ ーナーには、田野町や周辺の観光パンフレットやマップがそろい、高知県東部の観光相談ができる専属スタッフが常駐しています。四国一小さい町・田野町を散策するレンタサイクル(8時~17時)も用意されています。
●道の駅田野駅屋
休館日:年末年始のみ
営業時間:7時30分~17時30分
問い合わせ:☎0887-32-1077(直販コーナー)
☎0887-38-7820(情報発信コーナー)
道の駅田野駅屋全景 田野駅の階段も見えます |
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新鮮な農産品も並ぶ 田野駅屋店内 |
道の駅おすすめのスイーツや農産加工品 |
福田寺にある 「二十三士の墓」は、幕末に結成された士佐勤王党、二十三人の墓です。彼らは、攘夷、藩政改革、投獄の武市瑞山(半平太)釈放の嘆願書を藩に差し出しましたが、「徒党強訴」として、1864(元治元)年、取リ調べもなく処刑されました。二十三士の遺体は、同志の首領・清岡道之助の遺言により福田寺境内に埋葬され、後に道之助の妻・静が私財を投じ現在の墓碑を建立しました。福田寺から北東に約500mの場所にある奈半利川沿いの刑場跡は、「二十三士公園」となり、「二十三士殉節之地」と記された記念碑が残されています。志に散った若き魂に、手を合わせる人の姿は今も絶えません。
二十三士顕彰碑 武市瑞山の像のある福田寺 |
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二十三士の墓 |
福田寺のすぐ近く刑場跡の傍らを流れる奈半利川 |
「浜口雄幸旧邸」は、江戸時代の土佐藩郷士の代表的建築物で、質素な建物、簡素な庭園からは旧郷士の暮らしぶりがうかがえます。昭和52 (1977)年、邸宅は田野町に寄贈され、その後、修復工事が行われました。昭和初期、内閣総理大臣を務め、その風貌と謹厳実直さから「ライオン宰相」の異名を持った浜口雄幸は、第一次世界大戦後も軍拡の動きが活発な中、国内の不況を打開せんと、金解禁、軍縮、国際協調外交に舵を取りましたが、1930(昭和5)年、右翼青年に東京駅頭で狙撃され、重傷を負うも一命をとりとめましたが、翌年、帰らぬ人となりました。旧邸の「なすことの いまだ終わらず春を待つ」の雄幸直筆の碑から、ライオン宰相の志半ばの思いが伝わってきます。
●浜口雄幸旧邸
休館日:無休
開館時間:8時30分~17時
問い合わせ:田野町教育委員会☎0887-38-2511
![]() 浜口雄幸の像と直筆の句碑が立つ旧邸 |
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南国らしい蘇鉄が育つ庭と旧邸 |
『北川村「モネの庭」マルモッタン』は、印象派の巨匠クロード・モネがセーヌ川沿いに造り上げた家と庭を、クロード・モネ財団の指導を仰ぎながら再現したものです。自然をこよなく愛したモネの心を伝える「生きた美術館」として高く評価されています。園内には、花の庭、水の庭、光の庭やカフェ、手づくりパン工房、ギャラリーショップがあります。中でも水の庭には、モネが愛した青い睡蓮が咲く池や太鼓橋、薔薇のアーチなど、まさしくモネの世界が広がっています。
●北川村「モネの庭」マルモッタン
休園日:火曜日(祝巳の場合は営業)・4月~6月は無休・冬期メンテナス休園あリ
開園時間:9時~17時(最終入園16時30分)
問い合わせ:☎0887-32-1233
水の庭 |
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水の庭に咲く睡蓮 |
モネの絵のパネルも置かれた水の庭 |
モネが愛した青い睡蓮 |
アートな土産物が並ぶショップ |
「中岡慎太郎館」は、幕末の志士、中岡慎太郎の生き様を伝える資料館です。この地で生まれだ慎太郎は、24歳で「土佐勤王党」に加わり、脱藩後、坂本龍馬と共に奔走して薩長同盟を成し遂げましたが、京都・近江屋で龍馬と一緒にいるところを襲われ、非業の死を遂げました。資料館の周辺には、慎太郎が生まれた屋敷や勉学に励んだ松林寺の山門が残されています。高台には慎太郎の遺髪墓地があり、慎太郎が飛び込んだという“巻の渕“が望めます。生家からは川のせせらぎが間近に聞こえ、奈半利川と共に暮らした慎太郎の生い立ちを偲ぶことができます。
●中岡慎太郎館
開館時間:9時~16時30分(入館は16時まで)
問い合わせ:☎0887-38-8600
中岡慎太郎館全景 |
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奈半利川を背景に立つ中岡慎太郎の像 |
中岡慎太郎の生家 |
奈半利川を望む遺髪墓地 |
松林寺の山門 |
「北川温泉ゆずの宿」は、奈半利川を望む人気の温泉宿泊施設です。2018(平成30)年、リニューアルオープンしています。木のぬくもリが心地よい館内には、日帰リ利用できる温泉施設の他、レストランや売店があります。温泉の泉質は、含硫黄・ナトリウム・炭酸水素塩泉で、神経痛・リウマチ・皮虐病などに効能があり、源泉100%のとろりと肌をすべる湯は、美肌の湯として親しまれています。
●北川温泉ゆずの宿
日帰り入浴・レストランは火曜定休
日帰り入浴:11時~21時(20時30分札止め)
レストラン:ランチ11時30分~14時(ラストオーダー13時30分)
ディナー18時~21時(ラストオーダー20時)
問い合わせ:☎0887-30-1526
奈半利川沿いの北川温泉ゆずの宿 |
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ゆずの宿入り口付近 |
大浴場と露天風呂 |
木造の室内からは奈半利川も望める |
「二股橋」、通称「めがね橋」は旧魚梁瀬森林鉄道施設の一つで、1940(昭和15)年に建造された二連アーチ橋です。1911(明治44)年、農商務省(農林、商工行政をつかさどった中央官庁)の直轄事業として木材の運搬用に開通した魚梁瀬森林鉄道は、1942(昭和17)年には山と海岸線を結ぶ二つの路線が開通し、1963(昭和38)年に廃線となるまで、材木の他、生活物資や住民も運んでいました。2009(平成21)年、明治44年開通時の隧道等が経済産業省の近代化産業遺産群に認定され、同年、橋梁や隧道等18ヵ所の土木建築物が重要文化財に指定されました。
二つアーチが美しい通称「めがね橋」 |
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奈半利川河原から「めがね橋」を望む |
「めがね橋」から奈半利川を望む |
「堀ヶ生橋」は、昭和16(1941)年に建造された鉄筋コンクリ ー ト造、橋長46.9m、川面のアーチ形状と直線の路面までをコンクリートで埋めた我が国最大級の「充腹式単アーチ橋」で、旧魚梁瀬森林鉄道施設の一つです。橋の中央に突き出た待避所は、奈半利川の撮影にはうってつけですが、通行する車にはご注意ください。
奈半利川河原から堀ヶ生橋を見上げる |
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奈半利川と堀ヶ生橋 |
堀ヶ生橋からの奈半利川 |
「魚梁瀬ダム展望台」は、魚梁瀬ダムを一望するには絶好のビューポイントです。国内屈指の多雨地帯である奈半利川流域には、支川も含めると六つのダムがあります。中でも最大規模の魚梁瀬ダムは、電源開発株式会社が管理する発電用ダムで、高さ(堤高)115m、長さ(堤頂長)202m、岩石や土砂を積み上げて建設するロックフィルダムです。同型のダムとしては西日本最大規模を誇り、人造湖は四国屈指の規模を誇ります。ダム湖畔道沿いには他にも展望台があ り、それぞれに趣の違ったダム湖を眺めることができます。
![]() 展望台から魚梁瀬ダム下流を望む |
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展望台から魚梁瀬ダム堰堤を見下ろす |
「魚梁瀬森林公園オートキャンプ場」は、広々とした芝生に18の区画サイト、木立に囲まれた5棟のログハウスが森林の中にたくみに配置されています。ログハウスのウッドデッキから見る魚梁瀬ダム湖の眺めは秀逸です。敷地内には川が流れ、釣り堀もあり、水遊びも可能です。4月から11月までがオープンとなっていますが、管理人が常駐していないため予約が必要です。
●魚梁瀬森林公園オートキャンプ場
休み:12月~3月
ログハウス:チェックイン15時・チェックアウト10時
キャンプサイト:13時から翌日正午まで
問い合わせ:☎0887-43-2215
キャンプ場入りロと芝生広場 |
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ベランダのあるロッジとダム湖 |
ロッジからダム湖を望む |
「魚梁瀬森林保養センターやなせの湯」は、桜の名所として知られる魚梁瀬丸山公園にある温泉施設です。大浴場のタイルには名産のユズの木がデザインされています。泉質は低張性弱アルカリ性冷鉱泉で、神経痛、筋肉痛、関節痛、慢性皮膚病に効能があります。公園には、かつて馬路村の人たちの流通手段を担っていた魚梁瀬森林鉄道の軌道約400mが復元されており、日曜と祝日に運行しています。小学生以上は運転体験もできます。
●魚梁瀬森林保養センターやなせの湯
休館日:水曜日
営業時間:12時~19時30分
問い合わせ:☎0887-43-2240
やなせの湯全景 |
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ユズの木のタイルも鮮やかな浴室 |
復元された魚梁瀬森林鉄道 |
「千本山登山道入り口」は、標高1,085mの千本山への登山口です。千本山は、樹高25m以上のヤナセスギの巨木が17,000本以上も林立し、一目千本と呼ばれています。スギの他、モミ、ツガ、ヒノキ等約120種類もの樹木が生育しています。千本山の森は、江戸時代、領主によリ「藩林(はんりん)」、「留山(とめやま)」として厳重に管理されてきましたが、現在、林業にとって重要な樹種や希少な樹種を守るための「林木遺伝資源保護林」として維持管理が行われています。奈半利川の源流域・甚吉森は千本山のさらに東奥です。
![]() 登山口にある千年橋 |
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千年橋から奈半利川の眺め |